インタビュー こんな思いで本を作りました

四分の三世紀を生きて ――エッセー風・自分史――

2009年02月19日

武蔵  徹  著

四六判、210頁

(本書は「第一章 幼少年時代」「第二章 家族」「第三章 友とのかかわり」「第四章
我が青春の町……甲府」「第五章 航空自衛隊に生きて」「第六章 世相雑感」の6章で構成されています。全部で86編のエッセイを収録)

過去を800字でまとめる難しさと面白さ
著者の武蔵さんは、本のタイトル通り、ご自身の人生が4分の3世紀を迎えられたのを機に、自分史をまとめてみようと思われました。その際に武蔵さんがとった方法は、まず生涯学習センターの「自分史講座」に通ってみるという方法でした。もともと文章を書くことは好きな方で、以前に小説も出版したことがある著者・武蔵さんですが、「自分史講座」での研鑽は、ご自分の歴史を振り返り文章化するためには大へんよい経験だったそうです。小さいエッセイを書きながら文章を重ねていくこの講座の成果が、どのようにして本という収穫に結びついていったのかというあたりを中心にしてお話をうかがってみました。

※武蔵さんは学習院生涯学習センター自分史講座の猪狩章先生の講座に通われました。

武蔵さんは、日記などもずっとつけておられて、昔から書くことはお嫌いじゃなかったと思うんですが、そんな武蔵さんが「自分史講座」に行ってみようと思われたのはどんな理由からだったんでしょう?

はじめ自叙伝をつくりたいなと思いました。それでいろいろ考えてみて、自叙伝と自分史とはちょっと違うんじゃないかなとも思ったりしまして、とりあえずそのとっかかりとして「講座」に通い始めました。もう4年くらいになりますですかね、この4年の間に、他の生徒さんより3倍くらいの量は書いたんです。

それはすごいですね。その「講座」ではどういうことやるんですか?

はじめに3つの題がでましてね、1題につき800字が限度で、エッセイを書くんですよ。教室の他の皆さんは結構苦しんでいるようだったですが、私はね、割とすいすいと3題とか2題とか書いたんですね。それでね、そこの先生はとても褒め上手でね、丁寧な批評書いてくれるもんですから、励みになりましてね、私もそれに乗せられて、気づいたら結局80何篇かですか、出来上がったんですね。

武蔵さんが思っておられた自叙伝なり自分史が出来上がった?

自叙伝の書き方を教えてもらいに行った訳なんですが、でも私が考えていたのと先生のやり方ってのは大分違うんですよ。私は初め時系列で時を追って書くのがいいと思ってたんですが、先生は提題にからめて自分の過去やそのときの心象風景を書けばそれが自分史になると、こうおっしゃるんですね。過去を800字以内でまとめる訓練をしなさいと言うのですね。例えば「渡し舟」という題のとき、私の過去のことと絡めて必死に思い出したら、ふと私は鉄橋が台風で落ちたときのことを思い出したんですね。その現場に確か居合わせたんだったと。そしたら鉄橋がなくなってた間は、みんな渡し舟を使ったんだったと。こんなこと、この題がなければ思い出せなかったなーと思いました。

武蔵さんは記憶を呼び覚ますとき、どんなことされるんですか?

題が出されたら、その3つともを紙に書いて書斎に貼っておくんです。そうしていつもその題を目にしているうちに、フッと記憶が蘇ってきたりするんですね。いつ思い出すかわからないから、メモ用紙と筆記具をいつも枕元に置いてました。だいたい寝るときっていうのが一番いろいろなことを思い出すんですよ。

800字のエッセイというのはどうでしたか?

私にとってはちょうどよかったですね。足りなくて、その倍、2000字くらい書いたこともあったですけど。でも他の人にとってはどうでしょうね、文章書き慣れない人にとっては。長すぎて、800字すら書けないという人もいたみたいですけど。私にとってはほどよい量でしたかね。それに、この短いエッセイを重ねていくっていう方法は結構よかったですね。テーマが与えられて、あらゆる角度から記憶を検証できるし、いろいろな過去を割と平等に扱うことができて。得てして時系列の自分史というのは自慢史になっちゃうことが多いでしょ。そういう意味でよかったですね、このやり方は。

本が出来上がった後はどうですか?

やっぱり家内が一番喜んだんじゃないでしょうか。もう80代の長兄なんかも喜んでくれていると思います。20歳の孫なんかはどうですかね。でも、私の前の世代の話も本には出て来ますから、彼がのちのち生きていく上での資料になるんじゃないかな。本にはいろいろな人の思い出を書いたんですが、皆ほぼ実名で書いたのは、AさんとかBさんとかってやると感動が薄れるんですよね。それで実名にしました。この人はどうもむずかしいかなっていう場合は、やむなくそのエッセイは本に入れなかったんです。

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武蔵さんは前にはミステリーとかの本も書かれたということですが、自分史的なものは今回初めてですよね?

自分のことっていうのなかなか書けないんですよね。私も還暦過ぎた頃からようやく、自分のこと書こうかなって思い始めたんです。初め小説形式も考えて始めたんですが出来上がりませんでした。小説だとここまで書いていいのかなっていうところが出てきてしまって。

今回の経験も踏まえてお聞きしたいんですが、自分史をまとめようとする人に何かアドバイスみたいなもの、ありますか?

まず思いついたことを書き留めるっていうことじゃないですかね。原稿用紙何枚でもいいから思いついたとき書き留めて、それをつなぎ合わせていけば自然と本が出来ていくんじゃないですかねー。書くっていうのは単に綴り方をやっていては駄目で、「きのうおねいちゃんと遊びました。そのあとご飯を食べて寝ました」っていう式じゃ駄目で、自分の心象風景を現実と触れさせた文章ですね。だから自分史講座のやり方は、私はいいと思うんです。とんでもないことを思い出させてくれるんですね。

最後に、本のデザイン等のつくりはいかがでしたか?

始めは新書版で、と思ってたんですが、この四六判にして今はよかったと思ってます。カバーデザインや紙の質なんかも気に入ってますし、自分史講座の仲間にも評判はいいですね。何よりも、カバーに私が航空自衛隊で初めて乗った飛行機をあしらうことができてよかったです。これは模型を写真撮りしたものですが、この模型こそ、私の家内の姉の夫だった模型職人の遺作なんです。彼はかつて日本で三大名人と言われた人で、私とつながりのあるその人の作品を私の本に使えたことも印象深いことでした。

今日はいろいろとありがとうございました。

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